約9年間にわたって不法滞在を続けていた韓国籍の被告の初公判が開かれました。
被告は罪状認否で罪を認めましたが、飼い犬に対する愛情は相当なものらしく、不法滞在を続けたのも、飼い犬の面倒をみるためだとか。
犬と自分の人生どっちが大切?・・・
「犬と自分の人生、一体どっちが大切なんですか!」
飼い犬3匹と別れることができず、約9年間にわたって不法滞在を続けていた韓国籍の女被告(42)にいらだった様子の検察官は、声を荒らげた。だが、被告はその声に臆(おく)することなく、最後まで堂々と質問に答え続けた。
8年8カ月にわたって日本に不法滞在したとして、入管難民法違反の罪に問われた被告の初公判が8日、東京地裁で開かれた。 化粧気のない顔に、手入れの行き届いていないロングヘア、紺色のトレーナー姿で法廷に現れた被告は、約1カ月間の勾留(こうりゅう)生活で、心底疲れ切っている様子だった。公判中、被告は終始うつむいたまま、ハンカチを固く握りしめていた。
検察側の冒頭陳述などによると、被告は平成12年2月17日、就労の目的で日本に入国したが、在留期限の同年3月3日を過ぎても帰国せず、その後8年8カ月に渡り不法滞在を続けたという。その間、被告の働く靴工場が労働者の不法滞在がらみで何度か警察の摘発を受けていたが、被告は体調不良を理由に逮捕を免れていたという。罪状認否で、被告は罪を認めた。
被告人質問は、被告の犬の話に集中した。飼い犬のことを問われると、拘留中で面倒を見てあげられないことが悔やまれるのか、被告は激しく肩を震わせ、涙を流し始めた。
弁護人「不法滞在の期間が長かったのはなぜ?」
被告「来日してから1年後に、韓国に帰る予定でしたが、入国管理局に不法滞在を届け出ることが怖くなって、先延ばしにしてしまいました。その内、子犬が職場に迷い込んできたのですが、面倒を見るのが私しかいなくて(飼うことになりました)…」
弁護人「犬と別れるのがつらくて、ずっと日本にいたんですか?」
被告「はい」 弁護人「日本で稼いだお金は何に使いました?」 被告「犬が3匹いたので、仕事はまともにできませんでしたが、5万円は犬のために(使い)、3万円は教会に寄付をし、2万円は自分のお小遣い、そして1万円は犬のため(の予備)にと、本の間にはさんでおきました」
被告は、韓国に住む母親には、来日当初に30万円を送ったきり、全く送金していないのにもかかわらず、飼い犬のためには毎月5万円もの大金を使っていたという。
弁護人「逮捕されなかったら、ずっと日本にいるつもりだったの?」
被告「いいえ。犬の(世話にかかりきりな)せいで仕事ができなくなっていたので、韓国に連れて帰ろうと考えていたところでした…」
弁護人「帰国後は、どうやって生活するつもりですか?」
被告「故郷に母親の土地があるので、そこで他の動物を育てながら生活しようと…。ヤギとか…」
弁護人「もう2度と日本に来ないと誓えますか?」
被告「はい…」 続いて、被告人質問に立った検察官は、不法滞在の理由が「犬のためだった」と繰り返す被告に、心底あきれた様子だった。
検察官「靴の工場に警察が来て、知り合い全員が捕まったのは2年前でしたよね?」
被告「はい」
検察官「そのとき、なぜあなたは捕まらなかったの?」
被告「そのとき、(世話をする人間がいなくなる)犬のことを考えていたら、気を失ってしまって…。病院に行っている間に、警察は帰ってました」
検察官「その後、出頭することは考えなかった?」
被告「考えましたが、やはり犬のことが…」
検察官「犬と自分の人生、一体どっちが大切なんですか!」
被告「自分の人生の方が大事です。でも、犬を捨てることはできません!」
検察官の質問に、被告はひるむ様子を全く見せず、むしろ検察官に対抗するように、大きな声ではっきりと答えた。
検察官「しかも、あなた、偽の外国人登録証、買ったことありますよね?」
被告「はい…。犬を連れて散歩をしているときに、3人の警察官に会ったことがあって…。もし私が捕まったら、この子たちを面倒見てくれる人がいないので、無事に一緒に帰国するまで、外国人登録証が犬を守ってくれると錯覚したようです」
偽の外国人登録証は、路上で職務質問を受けた際に、警察官に提示しようと買ったものであるらしかった。
弁護人によると、被告人の飼い犬に対する愛情は「相当なもの」だという。接見時の会話も、犬の話が中心だったそうだ。
ペットに対して愛情を抱く気持ちは分かる。だが、金を飼い犬につぎ込み、約9年もの長期にわたって不法滞在を続けた被告の考えは、到底理解できなかった。
被告には即日判決が下され、懲役2年6カ月、執行猶予4年が言い渡された。
これで強制送還されることになった被告は、「もう日本には戻ってこれないので、迷惑をかけることはないと思います」と言い残し、法廷を後にした。
1月9日 産経新聞
聖法務オフィス
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